涙覆ってよこの雨で。

閉め出し期間、約４時間。
鍵を忘れて家に入れませんでした。

※ここから下、長いです。


鍵を忘れたことに気付いたのは、家の前で仙人と話し終わってばいばいした後、家に入ろうとした時。たぶん、４時３０分頃のこと。

話してる最中、母が車で出掛けるのを見たので、ああ、父を迎えに行くのかなーと、３０分もすれば帰ってくると思っていた。

しばらく待っても帰って来ないので、最初は郵便受から手を入れて内側から鍵を開けようとしたり、持っていたクリップでピッキングをしてみたりした。
しかしそんなの上手くいくわけもなく、自分で鍵を開けることは諦めるしかなかった。

またしばらく待っても帰って来ないので、暇つぶしにペットショップへ行った。
めちゃくちゃ可愛いセキセイのヒナがいたので少しかまって、ひっくり返ってる立派なカブトムシが起き上がろうと頑張っていたので応援して、店員さんと近くて少し気まずかったけどちっちゃいロシアンブルーとちょっと遊んで、時計を見たら６時１５分。

BLEACH始まってる…………。

せっかくグリムジョー出るかもしれないのに、諦めるしかないかああ録画予約しときゃよかったああ。とか思って家に戻ると車が無かった。
まだ帰ってないんだ。

止まっている自分の自転車にまたがり、後ろに漕いで空回りさせてたら、近所のおじさんに見つかり気まずかったので、家の周りをぐるぐる歩いてたら、音楽部の声。
亜流りんとくれはびとMちゃん。そのうち二人は傘をさしてなかった。
鍵を忘れた今の状況を話すと、気の毒だ、と心配してくれた。有難う、その時だけ元気になりました。

「あと１０分くらいで帰ってくるよー」と大口叩いてみんなと別れてしばらく。
帰ってくる気配なし。

じっとしてるのもなんなんで、家の周りを走ることにした。

ぐるぐる５周目。P4主人公だって傘さして走ってんだ、と自分を励ます。

ぐるぐる８周目。他所のお宅から夕御飯のいい匂いが。

ぐるぐる１０周目。壁と止まっているバイクの隙間に野良猫発見。
構おうとしたら逃げられた。

ぐるぐる１１周目。逃げた猫を探しながらもまだ走る。これが漫画かドラマなら、猫かまって時が過ぎるだろうに。

ぐるぐる２０周に近付いたころ、辺りが本格的に暗くなっていた。
なにがあと１０分くらいだ。俺の馬鹿！

自転車置き場にはオレンジ色のライトが。
色恋粉雪という歌を思い出し、元気を出すためにスキップしたり、くるくる回って歩いた。
閉じた傘を刀に見たて、構えや素振りもした。
少し高いところから開いた傘でジャンプもしてみた。
ひとりじゃなきゃ色々恥ずかしいことしてます。

ずっと待っても帰って来ないので、家の前の十字路で傘をさしながら立っていたら、遠くから自転車に乗った学生が数人来て、気まずかったのでかさを目深にさして、あっ自分、おばけみたいだなと思いながらも顔を見えないようにして立ってたら、学生が通り過ぎた後、

「え、ちょ怖くない！？」
「やばいって、怖っ！！」

………こっちだって怖いんだよォォォ！！暗い雨の中、ひとりぼっちで恐くて寂しくてたまんないんだよぉォォォ！！！(涙)

確かに、暗がりに制服で顔見えないように傘さしてつっ立ってたら誰だってビビるだろうけど、なんかの霊かと思うかもしれないけど、声に出さないでくれよ僕を見て逃げないでおくれよ！！

悔しくて、なんか自分のせい(？)で鳥肌が立ってきて走り去った。
玄関の前で体育座り。なんて惨めな受験生。

僕は、ただの寂しい人間なんだよっ…！


携帯は家なので、公衆電話から親に電話…しようとしたが場所が分からない。
でも外は真っ暗で、本気でやばく(いろんな意味で)なってきたので、近くの店の人に公衆電話の場所を聞くが、ここら辺には無いと言われる。

しかたないので時間見るためにコンビニに行くと、７時５８分。

……おいィィィ！

悲しくなって外出たら公衆電話発見。近くにあんじゃん！

生徒手帳、高杉さんの後ろにあるテレホンカードで父に電話。２回かけても繋がらない。
コンビニの内側からニヤニヤしながら電話してる私の顔を学生が見てきた。

な、なんだよ！別に、アンタらの知ってるヤツじゃねえよ！

３回目でようやくつながる。
「鍵、忘れた。家入れない。」

たくさんしゃべったら涙が出そうだったから、カタコト言葉になった。

怒られるかな、と思ったけど、父は優しい声で

「ずっと待ってたのか！？ごめんな。今駅だから、後１０分くらいで帰れる。そこで待ってな。」

………電話切ったら安心して涙出そうだったけど、家に入れず雨のなかひとりで泣きながら家に行くのは惨めすぎるので、涙はこらえた。

父が帰ってきたらやっと今に入れた。時計を見たら８時３０分だった。
そしてすぐ兄が帰ってきた。

話を聞くと、どうやら今日は母は仕事の遅番(１２時頃に帰ってくる)、兄は用事があって、父は少し会社の人と飲みに行っていたらしい。

この見事に家が留守になる日に、私は鍵を忘れたのだ。

運、無っ！！

これからは、忘れないように心がけま、す……！